NBAのサラリーマッチングとは?
労使協定(CBA)と、NBAが作成した労使協定の要点まとめ(CBA 101)で確認できる内容をもとにした、当サイト独自の解説です。
Summary
まず結論
- ・サラリーマッチングは、トレードで送る年俸と受け取る年俸の関係を、ルールの範囲に収めることです。
- ・トレード後の年俸総額がサラリーキャップを超えるチームは、「Traded Player Exception」などの例外の範囲でしか選手を受け入れられません。
- ・1st Apron・2nd Apronを超えると、使えるトレードの方法がさらに限られます。
ご注意:このページは一般的な制度の解説です。個別のトレードには、ここで扱っていない条件や例外があります。ルールはシーズンごとの基準額の変更やCBAの改定で変わる可能性があるため、最新の公式資料を確認してください。
What it is
サラリーマッチングとは
- 送る年俸と受け取る年俸の関係:トレードでは、チームが相手に送る選手の年俸と、相手から受け取る選手の年俸が変わるため、取引後の年俸総額がルールの範囲に収まるように組む必要があります。
- CBAの用語ではない:「サラリーマッチング」はCBAで定義された言葉ではありません。このページでは、トレードで受け入れられる年俸に関するCBAのルールをまとめてこう呼んでいます。
Why it matters
なぜトレードで必要になるのか
- キャップを超えるには例外が必要:CBAでは、チームの年俸総額は、例外を使わない限り、契約や獲得によってサラリーキャップを超えてはならないと定められています。
- キャップ以下に収まる場合:トレード後も年俸総額がサラリーキャップ以下に収まるチームは、キャップの余裕(Room)を使って選手を受け入れられます。
- キャップを超える場合:トレード後に年俸総額がサラリーキャップを超えるチームは、「Traded Player Exception」を使って、放出した選手の年俸をもとにした範囲で選手を受け入れます。
Outgoing vs. incoming
送る契約額と受け取る契約額の関係
キャップを超えるチームが使うTraded Player Exceptionには、主に次の種類があります。受け入れられる額は、いずれも放出した選手の年俸をもとに決まります。
- Standard Traded Player Exception:1人の選手の放出に対して、その年俸をもとにした範囲で選手を受け入れます。トレードから1年以内であれば、同じトレードの中だけでなく、後日のトレードでも使えます。
- Aggregated Standard Traded Player Exception:同じトレードで放出する複数の選手の年俸を合算し、その範囲で選手を受け入れます。
- Expanded Traded Player Exception:同じトレードの中で使う例外で、Standardより受け入れられる額の上限が広がります。
※ 受け入れられる額の計算方法や、保証されていない年俸の扱い、合算の制限などの細かな条件は、このページでは扱っていません。正確な条件は下の公式資料(CBA・CBA 101)を確認してください。
Thresholds
サラリーキャップ・タックス・Apronによる違い
- サラリーキャップ:トレード後の年俸総額がキャップ以下ならキャップの余裕を、超えるならTraded Player Exceptionを使います。
- ラグジュアリータックス:確認したCBA 101では、トレードで使える方法の制限は、タックスの基準額ではなく、サラリーキャップと1st・2nd Apronを基準に定められています。タックスは、レギュラーシーズン最終日の年俸総額が基準額を超えているかどうかで、税を払うかどうかが決まる仕組みです。
- 1st Apron:取引の直後に年俸総額(Apronの計算方法によるもの)が1st Apronを超えることになるチームは、Expanded Traded Player Exceptionなどが使えず、Standard・Aggregatedの例外の小さな上乗せ枠もなくなります。
- 2nd Apron:取引の直後に2nd Apronを超えることになるチームは、さらに複数の選手の年俸の合算や、トレードでの現金の支払いもできなくなります。
- その年度は超えられない:Apronに関わる制限の対象となる方法を使ったチームは、その年度の残りの期間、該当するApronを超えることができなくなります。
Comparison
通常のトレード・1st Apron超過・2nd Apron超過の比較
トレードの直後の年俸総額(Apronの計算方法によるもの)が、どの基準額を超えるかによって、使えるトレードの方法が変わります。
| トレードの方法 | 1st Apron以下(通常) | 1st Apronを超える | 2nd Apronを超える |
|---|---|---|---|
| Standard Traded Player Exception1人の放出に対して受け入れる | ○ 可 | ○ 可(上乗せ枠なし) | ○ 可(上乗せ枠なし) |
| 前の年度に生じたStandard Traded Player Exceptionトレードから1年以内なら後日も使える | ○ 可 | × 不可 | × 不可 |
| Aggregated Standard Traded Player Exception複数の選手の年俸を合算する | ○ 可 | ○ 可(上乗せ枠なし) | × 不可 |
| Expanded Traded Player Exception受け入れられる額の上限が広がる | ○ 可 | × 不可 | × 不可 |
| サイン・アンド・トレードでの獲得 | ○ 可 | × 不可 | × 不可 |
| サイン・アンド・トレードで放出した選手から生じたException | ○ 可 | ○ 可 | × 不可 |
| トレードでの現金の支払い年度ごとの上限の範囲内 | ○ 可 | ○ 可 | × 不可 |
- 1st Apron以下(通常)
- ○ 可
- 1st Apronを超える
- ○ 可(上乗せ枠なし)
- 2nd Apronを超える
- ○ 可(上乗せ枠なし)
Standard Traded Player Exception
1人の放出に対して受け入れる
- 1st Apron以下(通常)
- ○ 可
- 1st Apronを超える
- × 不可
- 2nd Apronを超える
- × 不可
前の年度に生じたStandard Traded Player Exception
トレードから1年以内なら後日も使える
- 1st Apron以下(通常)
- ○ 可
- 1st Apronを超える
- ○ 可(上乗せ枠なし)
- 2nd Apronを超える
- × 不可
Aggregated Standard Traded Player Exception
複数の選手の年俸を合算する
- 1st Apron以下(通常)
- ○ 可
- 1st Apronを超える
- × 不可
- 2nd Apronを超える
- × 不可
Expanded Traded Player Exception
受け入れられる額の上限が広がる
- 1st Apron以下(通常)
- ○ 可
- 1st Apronを超える
- × 不可
- 2nd Apronを超える
- × 不可
サイン・アンド・トレードでの獲得
- 1st Apron以下(通常)
- ○ 可
- 1st Apronを超える
- ○ 可
- 2nd Apronを超える
- × 不可
サイン・アンド・トレードで放出した選手から生じたException
- 1st Apron以下(通常)
- ○ 可
- 1st Apronを超える
- ○ 可
- 2nd Apronを超える
- × 不可
トレードでの現金の支払い
年度ごとの上限の範囲内
※ 「1st Apron以下(通常)」の列で、Traded Player Exceptionを使うのは、トレード後の年俸総額がサラリーキャップを超えるチームです。「前の年度」は、レギュラーシーズン終了から次のレギュラーシーズン終了までを1年として数えます。上乗せ枠とは、Traded Player Exceptionで受け入れられる額に加えられる小さな枠のことです。ルールはシーズンやCBAの改定で変わる可能性があります。
Related
関連ガイド
トレードの全体像や、基準額そのものの仕組みは、次のガイドで解説しています。
関連ガイド:NBAトレードの基本(トレードで扱われるもの・時期・ウェイブとの違い)
関連ガイド:NBAサラリーキャップとは?(基本の仕組み・例外)
関連ガイド:NBAラグジュアリータックスとは?(税率の考え方・チーム編成への影響)
関連ガイド:NBAの1st Apronと2nd Apronとは?(制限の内容・指名権のペナルティ)
Glossary
関連用語
- サラリーマッチング
- トレードで送る年俸と受け取る年俸の関係を、ルールの範囲に収めること。CBAで定義された言葉ではなく、関連するルールの総称。
- 年俸総額(Team Salary)
- サラリーキャップと比べる、チームの選手の年俸などの合計。Apronやタックスの判定には、それぞれ調整した額を使う。
- Traded Player Exception
- サラリーキャップを超えているチームが、トレードで放出した選手の年俸をもとに、別の選手を受け入れるための例外。
- サイン・アンド・トレード
- フリーエージェントの選手が元のチームと契約し、そのまま別のチームへトレードされる取引。
- サラリーキャップ
- チームの年俸総額の基準となる上限。例外を使わない限り、これを超える契約や獲得はできない。
- ラグジュアリータックス
- 年俸総額が基準額を超えたチームが支払う税。レギュラーシーズン最終日の年俸総額で判定される。
- 1st Apron / 2nd Apron
- タックスの基準額より上に設けられた2つの基準額。超えると使えるトレードや契約の方法が制限される。
リンクのない用語の詳しいガイドは準備中です。
Official sources
公式一次資料
- 2023 NBA Collective Bargaining Agreement(PDF・英語) ↗
NBA ・ 2023年7月1日発効(2029-30シーズンまで)
第7条(Article VII)Section 2(e):Apronによる取引の制限/Section 6(j):Traded Player Exception/Section 8(a):トレードでの現金
- CBA 101: Highlights of the Collective Bargaining Agreement(PDF・英語) ↗
NBA ・ 2024年11月作成
II.B(1)・(2):キャップの余裕と例外/II.B(2)(i):Traded Player Exception/II.D:タックスの判定/II.E:Apronによる取引の制限
このページは上記の公式資料をもとにした当サイト独自の解説です。協定の条文を転載・翻訳したものではありません。