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NBA史上最大の罰則!クリッパーズ「サラリーキャップ迂回」事件その③(最終) NBAとクリッパーズ(スティーブ・バルマー)の思惑

2026年10月5日

約1年に及んだ調査。

NBAは「今シーズンの開幕までには解決する」としていましたが、なかなか進展が見えず、一時は「疑惑はかなり濃いものの、決定的な証拠までは出ず、最終的には注意程度で終わるのではないか」とも思っていました。

ところが、その予想を大きく覆す裁定が下されました。

**NBA史上最大級の処分です。**

NBAコミッショナーのアダム・シルバーが、ロサンゼルス・クリッパーズに対して厳しい裁定を下しました。

## 相手はNBA最大の資産家、スティーブ・バルマー

クリッパーズのオーナーは、マイクロソフト元CEOの**スティーブ・バルマー**。

世界長者番付でも上位に位置し、その資産は約1,450億ドル、日本円にして約22兆円規模です。

NBAオーナーの中では、文字どおり桁違いの資産家です。

2位のアデルソン一族が約313億ドルとされていることを考えても、その差がどれほど大きいか分かります。

NBAオーナーの資産ランキングについては、こちらも参照してください。

https://nba-front-office-japan.vercel.app/rankings/owner-net-worth

さらに、この金額をNBA全体と比較すると、その異常な規模がより分かりやすくなります。

NBAそのものには、上場企業のような「時価総額」はありません。

ただし、30チームの資産価値を合計すれば、リーグ全体の経済規模を考える一つの目安にはなります。

CNBCによる2026年2月時点の評価では、NBAチームの平均資産価値は約55.2億ドル。

単純計算すると、

**55.2億ドル × 30チーム=約1,656億ドル**

となります。

つまり、NBA30チーム全体の価値が約1,650億ドル規模なのに対し、バルマー個人の資産は約1,450億ドル。

もちろん単純比較できる数字ではありませんが、**NBA全体のチーム価値の合計に迫るほどの資産を、一人のオーナーが保有している**ということです。

それほど大きな経済力を持つ人物が、今回の処分対象になりました。

## NBAにとって非常に難しい相手だった

NBAはこれまで、セクハラやパワハラ、人種差別的発言など重大な問題を起こしたオーナーに対し、厳しい処分(追放)を下してきました。

ただ、今回の相手はスティーブ・バルマーです。

莫大な資金力だけでなく、ビジネス界に巨大なネットワークを持ち、さらに本人は熱烈なNBAファンでもあります。

簡単に「オーナー資格を剥奪すればいい」という相手ではありません。

その一方で、NBAはリーグ全体で戦力均衡を目指しており、他の29チームのオーナーに対しても公平性を示す必要があります。

もし資産家だからという理由で処分が軽くなれば、リーグのルールそのものへの信頼が揺らぎます。

そこでNBAが下したのが、今回の厳しい処分でした。

## NBAが下した処分

クリッパーズには、

- 合計5つのドラフト1巡目指名権の剥奪 - 3,000万ドルの罰金 - オーナーや球団社長など、フロント関係者への職務停止処分

などが科されました。

3,000万ドルの罰金は過去最高額。

普通に考えれば途方もない金額ですが、約1,450億ドルの資産を持つバルマーからすると、資産全体に占める割合はごくわずかです。

そのため、クリッパーズにとって本当に痛いのは罰金よりも、**ドラフト1巡目指名権を5つ失ったこと**でしょう。

## 5つの1巡目指名権剥奪はかなり重い

クリッパーズは昨年、元オールスターのポール・ジョージを放出。

さらにイビチャ・ズバッチをトレードし、今回の事件の中心人物でもあるカワイ・レナードも放出しました。

完全な再建とまでは言えないものの、チームは若返りを進め、いわば「プチ再建モード」に入っています。

その状況で、5つものドラフト1巡目指名権を失うのは非常に厳しい。

現在のNBAでは、有力選手が完全FA市場に出てくるケースが以前より少なくなっています。

スター選手を獲得するにはトレードが重要になりますが、その際に大きな価値を持つのがドラフト指名権です。

その指名権を複数失えば、トレードに使えるアセットが不足します。

つまり今回の処分は、クリッパーズの**今後数年間のチーム編成そのものに影響を与える可能性がある**ということです。

## 当初は徹底抗戦の姿勢を見せたバルマー

裁定直後、スティーブ・バルマーはNBAの判断に強く反発し、徹底抗戦も辞さない姿勢を見せていました。

しかし、その後は法廷闘争を選択せず、方針を転換。

次のような声明を発表しています。

> 「調査結果には依然として意見の相違があるが、オーナーはチームを支えるべきであり、邪魔をしてはならない。我々はこの一件を終わらせたい。クリッパーズにかかわるすべての人にとって、これは非常に困難な時期だった。この件で生じた混乱と苦痛について謝罪したい。筆頭オーナーとして、その責任を全うするつもりだ」

なぜ、徹底抗戦の姿勢から一転したのか。

ここには、NBAとは別の問題も関係している可能性があります。

## 刑事捜査に発展する可能性も

一方で、クリッパーズとレナードをめぐる取引については、刑事捜査が進められているとも報じられています。

『ロイター』によれば、ニューヨーク東地区の連邦検察当局が捜査を主導し、少なくとも1件の召喚状が発行されているとされています。

今後、大陪審の手続きに発展する可能性もあると報じられています。

もしバルマー側がNBAを相手に法廷闘争を始めれば、証拠開示などを通じて、これまで表に出ていなかった事実が明らかになる可能性もあります。

さらに状況が悪化すれば、NBA側が追加処分を検討する可能性も否定できません。

そうしたリスクまで考えれば、「ここで終わらせる」という判断をしたとしても不思議ではありません。

また、カワイ・レナードを含めたトレードが宙に浮き、キャンプやプレシーズンへの影響が続くことも、チームにとっては避けたい状況でした。

## アダム・シルバーにとっても難しい裁定だったはず

今回の問題は、NBAコミッショナーのアダム・シルバーにとっても非常に難しい判断だったと思います。

一方には、NBA最大の資産家であるスティーブ・バルマー。

もう一方には、戦力均衡と公平な競争環境を守らなければならないNBAというリーグがあります。

バルマーに対して必要以上に弱腰になれば、他のオーナーから不満が出る。

かといって、オーナー資格剥奪のような極端な処分まで踏み込めば、巨大な法廷闘争に発展する可能性もある。

その中でNBAは、

**5つの1巡目指名権剥奪、3,000万ドルの罰金、関係者の職務停止**

という非常に重い処分を選びました。

リーグのルールを守る姿勢を示しながら、バルマーとの全面戦争までは避ける。

かなり難しいバランスを取った裁定だったように見えます。

## 実は一番得をしたのはカワイ・レナード?

一方で、今回の処分内容を見ると、別の疑問も残ります。

結果だけを見れば、最も得をしたのはカワイ・レナード本人とも言えます。

レナードに科された罰金は70万ドル、約1億円。

一方で、問題となった迂回報酬は3,900万ドル以上ともされています。

また、その仕組みに深く関与したとされるレナードの叔父、デニス・ロバートソンには、5年間のNBAおよびチーム関連活動への禁止処分が科されました。

クリッパーズ側への処分と比較すると、レナード本人やロバートソンへの処分は軽い印象があります。

ここには、NBAと選手会との関係も影響しているのではないかと感じます。

NBAが選手本人に極端に重い処分を下せば、選手会から強い反発が出る可能性があります。

また選手側からすれば、

「NBAオーナーは選手とは比較にならないほど巨大な資産を持っている。ルール違反になるような決断をしたのであれば、それを飲んだ球団側にも大きな責任がある」

という考え方になるでしょう。

実際、本来クリッパーズはその提案を拒否し、NBAへ報告するべき立場でした。

それをしなかったことも、今回クリッパーズ側に重い処分が下された理由の一つと考えられます。

## 約1年間続いた問題がようやく終結

こうして約1年間続いた問題は、ひとまず終結しました。

トレードも成立し、選手、チーム、リーグともに、ようやく新しいシーズンのスタートラインに立つことができました。

試合そのものはもちろん面白い。

しかし、

**サラリーキャップ、オーナー、選手会、リーグ、ドラフト指名権、そして巨大なビジネスが複雑に絡み合う。**

こうした「コート外の攻防」も、NBAを追いかける面白さの一つだと思います。

実は、もう一つ似たような事件 バックスとトレントJr.をめぐる調査が進行中…「レナード以上」の処分も・・・・ これも別の記事にて・・・・

構成●NBA Front Office Japan編集部

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